審査結果

大賞 賞金250万円

田んぼの記憶/ancou
STORY

進学は絶対東京へ、と意気込む高校生の少女は、地元の田舎くささにうんざりしていた。
そんな彼女がいつもの帰り道、水の張った田んぼに落ちてしまう。
ところが落ちた、と思ったものの服は汚れておらず周辺には人気(ひとけ)も無く、いつも通れるはずの帰り道は先に進めない。
彼女は同じ状況の青年に出会う。
ここはどこで、彼は誰で、どうやって帰るのか。
いつもと同じ景色のまったく別の世界に迷い込んだ少女のお話。

準大賞 賞金200万円

SORA/久海 夏輝
STORY

どこかの世界。
壊れ、失われてしまったものを取り戻すために青空を目指した、7体の子供たちの物語。

佳作 賞金10万円

かわいい おいしい バリ日記/マツダシホPKG/G23
ストレイシブリングス/ぴこぴこリョウ3つのマシュマロ/ミソラビ/キャラテレブー

事務局奨励賞

お館さまとわたし/一訶

講評

総評

第三回を迎えたデジタル・コミック大賞2009も、コミック・アニメ両部門とも数多くの参加を戴き、レベルの高い実力作が集まりましたが、2次審査の50を超える作品から最終選考に残ったコミック6作品、アニメ5作品は何れも個性的な実力作品でした。

コミック部門については、『お館さまとわたし』オーソドックスな“魔女もの”ではありますが、画、ストーリー共に安定感がありましたし、『かわいい おいしい バリ日記』はエッセイコミック風な旅行記を素直に楽しむ著者の視線が好感を呼びました。『PKG』は何処か懐かしさを感じる画のタッチもさることながら、日常に潜む不思議をさりげなく描いた作品。『ストレイシブリングス』は2人の姉弟の“捜し物”放浪を絵本のようなタッチで描いており、『栗坊主』は一転して“赤ずきんちゃん”を下敷きに栗坊主という妖怪を登場させたシニカルな作品でした。
そんな中で、審査員一同の最も高い評価を受けた作品が、今回大賞受賞に推挙された、ancou さんの作品『田んぼの記憶』で、今までのコミックは異なる独特の空間表現、映像化を意識したような絵コンテようなの作画タッチの中に、非日常的なストーリーが違和感無く埋め込まれていて、高評価を獲得しました。
アニメについては、『やさしいソクラテス』は野菜をモデルに今日的なテーマを取り上げシニカルな仕上がりになった作品だが、連作の為か統一感には欠けていたように思われました。『めしあがれ』はカップアイスが主人公のゆるキャラのストーリーだが、今一歩。『3つのマシュマロ』『ミソラビ』はそれぞれアニメとしての安定した実力を評価する意見も出されたが、16分の圧倒的なボリュームと完成度の高さから『SORA』を推挙する意見が多く、久海夏輝作品『SORA』がアニメ部門では最高作とされました。
その結果、今年度はコミック部門のancou作品『田んぼの記憶』が大賞、アニメ作品の久海夏輝作品『SORA』が準大賞という結果になりました。
又、その他佳作四作品以外で、『お館さまとわたし』が事務局奨励賞を授賞いたしました。

最終講評:中村公彦

まず、昨年度の不振から一転して、今期は豊作の年となったことを素直に喜びたい。コミック部門のancouさん『田んぼの記憶』は審査会でも「頭二つ抜けている」と圧倒的な支持を得て、文句なく大賞に決まった。統一されたフレームで一コマづつ話が進み、ワンシーンで動作が連続したり、表情や台詞が変化したり。なんとも斬新な表現を生み出している。これはスライドショーで読むマンガなのか?コマ送りのWEBアニメなのか? どう呼ぶにせよ、デジタルという新たな表現媒体から生まれた、「マンガの進化系」なのは間違いない。まさに「デジタルコミック大賞」の名に相応しい受賞作が満を持して登場したと言えるだろう。アニメ部門準大賞の久海夏輝さん『SORA』は力作。戦争をテーマにしたメッセージ性の強い作品だが、静謐な描写の中に、深い哀しみと再生への希望を描く。独特な切絵調のタッチも効果的だ。惜しいのは無声のために細かな展開が伝わり辛く、観ていて歯痒さが残ったこと。次作は何とかこの辺りの限界を突破して欲しい。佳作の4名もそれぞれ個性的な作品が揃った。今後に大いに期待できる収穫があったと思う

最終講評:森川嘉一郎

ページをめくるリズムで、場面展開の緩急を操る。絵と物語からなるメディアに見えて、読者にそのような音楽的とも言える快感を与えることが、実は、マンガという表現媒体の極めて大きな特徴を成している。しかし、画面上で読ませるマンガは、タクトを振るがごとく手を動かしてページをめくる営みを喪失させることから、この音楽的快感を希薄にさせるきらいがある。
そのように思っていた。今回の『田んぼの記憶』という作品を読むまでは。この作品は、まさに画面という枠組みに特化して、映画のカットを継ぐタイミングをリアルタイムで操っているような、新しい快感を読者に与えてくれる。クリックする指が、あたかも編集室のフィルム・スプライサーに成り代わるかのようだ。これは作者の巧みな構成力によって支えられていると同時に、コロンブスの卵のごとき発明でもある。この達成を礎にした展開が大いに期待される。 『SORA』は、映像のスタイルと物語のメッセージとが、高度に相乗していることを評価した

最終講評:前山寛邦

レコード会社プロデューサーの立場から今回のデジタル・コミック大賞に審査員として参加させていただきました。20年以上アニメコミックといったものに関わっていましたが、主に主題歌という観点からで、実際にコミック・アニメを審査させてもらうという事は勝手が違うなという部分と同時に、ある種新鮮な感激がありました。コミック部門については、『田んぼの記憶』『PKG』『栗坊主』の3作品を推薦させていただきました。 『田んぼの記憶』については、同じような構図が何度も現れる不思議な映像感覚にも係わらず、飽きさせず、作者の自信のようなものを感じる作品でした。『PKG』は、そのストーリーに共感を覚えましたし、『栗坊主』はなによりその意外性、思いもよらない結論が面白かったと思います。結果、「田んぼの記憶」の受賞には何の依存もありませんでした。 アニメについては、『SORA』が高い完成度を持っている作品だと思いましたし、『3つのマシュマロ』『ミソラビ』も面白い大人の作品だと思いました。

コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社
A&R本部 アニメ制作グループ 担当部長 前山寛邦


※当初、公表させて戴いていた審査員、原康晴氏は本年6月にコロムビアミュージック エンタテインメント株式会社の代表取締役に就任され、諸事多忙を極めている事から、 自身の審査員変更と同時に、同社理事、A&R本部制作部でアニメ制作グループの担当 部長として、長く同分野に係わってこられた前山寛邦氏を推薦され、事務局もこれを 受け入れ、本審査に応じていただいた次第です。

デジタル・コミック大賞運営事務局

最終講評:湯川正

第三回を迎えたデジタル・コミック大賞は、今年からコミックとアニメの2部門に分かれ、数多くの応募を戴きましたが、中々の力作揃いの中、今後デジタルコミックという将来性を考慮すると、本年度のデジタルコ・ミック大賞2009は『田んぼの記憶』(コミック)、準大賞として『SORA』(アニメ)という事で全員一致の結論を見たということです。
『田んぼの記憶』はクリック毎に画面の切り替えを意識した映像的な作品で、表現として新鮮なものを感じました。ストーリーの完成度も高く、明らかにデジタルで見せる事を意識して紙と映像の中間的表現を意識した作品として完成度の高さを感じました。
アニメ部門からは『SORA』が傑出している印象で、16分の力作で、絵、構成、ストーリー、どれもバランスが取れた作品です。
更に、コミックとして『バリ日記』『PKG』『ストレイシブリングス』の三作品は其々違うテェイストを持ち、共にデジタル化についての可能性を持っていると思われるので佳作。アニメについても『3つのマシュマロ』『ミソラビ』の作者に多様な作品制作に対する可能性を評価して佳作と致しました。

→ 一次・二次選選考結果を見る

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