





第4回を迎えた今回のデジタル・コミック大賞も新たに新設されたインタラクティヴ部門を加え、多くの応募作品を頂きましたが、
全体としては、アニメを中心とした力作が目立ち、
今までのカテゴリーでは収容できないゲーム性を加味した
よりマルチメディア表現を必要とするコンテンツの応募に、新たな可能性を感じた年でもあります。
最終候補作品として、コミック部門4編、アニメ部門6編、インタラクティヴ部門2編の12編が選ばれましたが、
アニメ作品6編と言うことからも、アニメ作品の充実振りが指摘されました。
大賞受賞作の小笠原史氏の『エンゼルフィッシュの日』は30分に及ぶ3D-CG映像により、
人類文明の未来の末に過疎化し荒廃した地球の都市空間を見事に描き出し、
人間を捕食しようと襲い掛かる鳥や獣と主人公たちの戦いを描き出します。
そこに登場するユニークな鳥獣のキャラクター造形もさることながら、荒廃化した未来都市内外部のディテールも素晴らしく、
その大作を描ききった力量に多くの審査員の支持を得ました。
優秀賞に推薦された作品、晴山綾香さんの『おもいでんしゃ』は誰もが経験するであろう惰性的な日常生活の疲労感を丁寧に描いてゆきます。
通勤電車と仕事場の行き帰り、同僚の何気ない視線、暗い自宅の部屋、冷蔵庫のビール・・・そんな時ふと目にした廃屋の電車、
乗り込んだ主人公に蘇った感情は日頃の憂鬱な“重い”電車ではなく、
一生懸命だった受験の頃や野球に夢中だった幼年期の自分に愛情を注いでくれた両親への篤い“想い”に繋がる電車だった・・・。
日常と非日常を描きながらも、ノスタルジックな結末を迎えるこの作品には、
作者晴山さんの年齢と共に、その実力を評価する声が審査員の中でも高かったです。
もう一つの優秀賞受賞、水野歌さん『来風館であいましょう(平成版)』は所謂ビジュアルノベルというジャンルであり、手法としての新しさは無いが、
作画の技術を含め、丁寧で完成されたスタイルを持っているとの評価を得ました。
こうした作品ジャンルを顕彰するアワードは少ない事からも、新たに設定されたインタラクティヴ部門自体の今後の方向性を考える意味でも、
こういった作品を評価する事に本アワードの意味があると考えています。
その他事務局奨励賞として4作品が選ばれました。
タケシ ウチウミ氏の『ぎんのきのこ』は、絵本をめくるようなファンタージー感とは別に語られてゆくストーリーは悲しく、
高度なアニメーション技術が評価されました。
スズキ ケンスケ氏『味鳥 SPICE BIRDS』はコミカルな味鳥をキャラクターに据えてスパイスの効いたナンセンスコメディー風に纏めた一篇で、
キャラクター造形には各審査員の高い評価があった作品です。
筑濱カズコ氏の『赤坂クミコの上海物語2010』はインタラクティヴ作品として、
構成や画面作りが今後のデジタルコミックの方向性になるのではなないかという指摘が審査員からあり、コミカルな内容とあわせ、続きが見たくなる作品です。
コミック部門から唯一選出された岩崎(崎の字は山へんに立・可)有希子『葵ノ朏(みかづき)』は時代劇と言う難しいテーマを選びながら
ストーリー、キャラクター、背景描写など、コミック作品としての、その総合力を評価されました。


今回の最終候補作品にいえることは、全体的にアニメの水準が高いと感じた事だ。
但し、作品的にキャラクター等には良いものがあるが、ストーリーの部分が弱いというのが共通した印象である。
作品の比較で見れば、『エンゼルフィッシュの日』が総合的には大賞かと思う。
キャラクターの面白さでは『味鳥』がいい。
『おもいでんしゃ』は暗い内容にもかかわらず、作者の実力、才能を感じさせる。
『赤坂クミコの上海物語2010』はデジタルコミックと言う意味では 方向性として一番ふさわしい作品なのかもしれない。

「キャラ立ち」に魅力の重心を置いた作り方は、日本のマンガやアニメ、ゲーム、ライトノベルの大きな特質の一つであり、
メディアミックス展開など、出版社やメーカー、広告代理店側で作品を商業的に成立させるための方法論も、そのような伝統に立脚して構築されてきた。
しかし既存の方法に頼りすぎると、もっぱら同じ客層に向けて、判で押したような作品ばかり届けられることになり、遅かれ早かれ縮小再生産に陥っていく。
キャラ立ちに頼った作品作りも売り方も、今や制度疲労を起こしている。
『エンゼルフィッシュの日』は、キャラクターも物語も世界観も、その内容にさして目新しさはないが、
舞台となっている異世界をひたすら描き込むことによって作品を構築しようとする、そのエネルギーと奇妙なバランス感覚に新しさがある。
キャラクターよりも世界の描き方に重心を置く、フランスの大人向けマンガ、バンド・デシネを彷彿とさせる。
『おもいでんしゃ』は映像で物を語ることの基本に立ち返った作り方で、小品ながら観客を問わず魅せる作品となっており、作者の今後に期待させる。
『来風館であいましょう』はビジュアルノベルの形式を丁寧に活かした物語を構築してみせており、
その技術が新たに現れつつあるデジタルコミックの媒体や流通チャンネルで発揮されることを望みたい。

デジコミ大賞の意味を考えるとキャラクターやストーリーの上手さが重要だと思う。
そうした点では今回の応募作品の技術のレベルは高いという印象を持った。
只、それをビジネスと言う視点でどのように選ぶかと言うと難しい。
コミック部門については、紙を意識しすぎた作品が目に付き、デジタルで見るコミックとしての意味が見出せなかった。
アニメ作品は纏まっており、タケシ ウチウミさん『ぎんのきのこ』、スズキ ケンスケさん『味鳥』のような作品は、
キャラクターが動いている面白さがフイルムで見るのとは違う面白さと可能性を感じさせる。
インタラクティヴ部門に関しては、筑濱カズコさん『赤坂クミコの上海物語2010』はインタラクティヴ性があるのではないか。
こういう構成や画面作りが今後のデジタルコミックの方向性なのではないかと感じる。
又、可能性は感じるが、内容がいま一つで、新味が感じられないのが残念な作品が、水野歌さん『来風館であいましょう(平成版)』。
見ていて楽しく、演出的にも良くできていたのは『おもいでんしゃ』、『味鳥』、『ぎんのきのこ』の3作品。
方向性としては筑濱カズコさんの『赤坂クミコの上海物語2010』、『おもいでんしゃ』の晴山綾香さんには一番才能を感じた。

今回は、アニメは『エンゼルフィッシュの日』、インタラクティヴは『来風館であいましょう(平成版)』ではないだろうか。
どちらの作品もちゃんと‘見る人’を意識して作られているなと感じました。プラスαがあれば、商品として成立するのではないかと思える。
特に『エンゼルフィッシュの日』は、30分間を飽きることなく見ることができ、とても楽しめた。
おそらく制作には時間はかかったと思えるが、自主映画として一定のクオリティを維持して30分間の作品を最後まで作り上げたことは、
純粋に素晴らしいなと思える。
人物のキャラクターデザインと、表情の部分はもう少し時間をかけることができれば全体的により良くなる。
この部分が、自分の担当だと不得意であるならば、新たな誰かの力をかりて足し算をして、制作することをお勧めする。
作品を構成するポイントである「企画」「キャラクターデザイン」「ストーリー」「アニメーション」「演出」という意味では、突出したものはなかったが、
30分間を見せきったことが一番の評価ポイント。
出品作品の全体の印象として感じたことではあるが、ストレートなメッセージで前向きになれる作品や、
バカバカしいけど単純に笑えるコメディなどは無かったので、いろんな切り口の作品がもっと出てきても良いのになあと思った。